■あの日見た桜 第6幕〜再会・そして永久に〜
−屋敷の中。うろうろと義高を探す大姫−
大姫 義高様ー!義高様ー!義高様・・・・義高さまぁーー!!
−大姫、がくっと座り込む−
大姫 義高様・・・・どこに行っちゃったの?もう、10日だよ?義高様がいないと、姫、ご飯もおいしくないんだよ・・・?義高様・・・義高さまー!
−重成登場。庭の隅から大姫に声をかける−
重成 姫様、姫様!
大姫 !その声・・・重成っ!?
−慌てて庭に飛び出す大姫。義高登場。義高の姿を見て足を止める大姫。舞台の中央あたりで足を止める義高−
大姫 義高様!!
義高 姫!
−大姫、義高に駆け寄り抱きつく。義高も大姫を抱きしめる−
大姫 義高様・・・・
−急に身をはなす大姫。驚く義高−
義高 姫?
大姫 義高様のバカ!!姫、心配したんだからっ!・・・急にいなくなって・・・もうしらない!!
義高 姫、ごめん!・・・一度捕まって、牢屋に入ってたんだ・・・重成が助けてくれて何とかここに・・・もう一度、姫に会いたくて・・・
大姫 もう一度?ずっと一緒じゃないのっ!?
義高 俺達は・・・遠くへ行かないといけないんだ・・・・
大姫 どうして!?義高様は姫の「おむこさん」でしょう!?ずっと傍にいるって、約束したじゃない!!
義高 姫!!人は別れたくなくても、いつかは別れなくちゃいけないんだ!
大姫 そんなのやだ!!
義高 俺だって嫌だよ!!でも、仕方ないんだ・・・
大姫 ・・・・・・・・針、千本だよ・・・・? 桜、散りだす
義高 姫?
大姫 姫、指きりしたもん・・・覚えてるもん!!
義高 ・・・懐かしいな・・・あれは、姫に初めて会った日で・・・・ちょうどこんな風に夜桜が舞っていた・・・あの日見た桜は、綺麗だったね。来年も、再来年も、ずっと、ずぅーっと、綺麗に咲くんだろうね。
姫、桜を見たら俺や重成のこと思い出してくれ・・・
大姫 義高様・・・・いや、いや!姫も一緒に行く!義高様と一緒に行く!
義高 姫!!
頼朝 義高はおるか!! 頼朝登場
重成 お屋形様! はっとして、両手をつく義高
頼朝 やはりここであったか・・・姫、向こうへ行っていなさい。
大姫 嫌!お父様、どうして義高様を牢屋に入れたりしたの!?義高様、何もしていないじゃない!
政子 何の騒ぎです!?・・・・・!・・・これは・・・・ 政子登場
頼朝 政子、大姫を連れて行け。
政子 しかしっ・・・!!
義高 政子様!・・・お願いします・・・・
政子 義高殿・・・・・・・・・・・・・分かりました・・・・・姫、行きましょう・・・・
大姫 いや!お父様、義高様に何をするつもりなの!?お父様の・・・お父様のバカ!!
義高 姫!!そんなこと、言うもんじゃない!!
・・・・・俺は・・・頼朝様と大切な話があるけど、それが終わったらすぐに姫のところに行くから。だから、何も心配しなくていい。
大姫 ・・・・・・・・うそ・・・・・・・・
重成 姫様?
大姫 義高様うそつきだもん!前もどこにも行かないって約束したのに、いなくなったじゃない!今度のだって、うそなんでしょう・・・!? 泣き出す大姫
義高 ・・・・ばかだなぁ、確かに一度いなくなったけど、こうしてまた姫のところに戻ってきたじゃないか・・・・泣くなよ・・・・ わざと明るく振舞う義高
大姫 本当に?もう、どこにも行かない?
義高 ああ!どこにも行かない。ずっと、姫と一緒にいるから。だって俺は、姫の「おむこさん」だろ?
大姫 ・・・・うん・・・・・!
政子 さあ、姫。分かったでしょう?向こうに、行きましょうね・・・・
大姫 義高様。あとでね?
義高 ああ。約束だ!
−ゆっくりと去っていく姫と政子。義高、思わず呼び止める−
義高 姫!!・・・・・・・・・・・いや、何でもない・・・
大姫 うん・・・・
−完全にいなくなる二人−
義高 ・・・・最後まで・・・ごめんな・・・・・
頼朝 義高・・・すまない。あのまま逃げ延びていてくれれば・・・・
義高 いえ。もとより、死ぬ覚悟はしていましたから・・・
頼朝 では、何故逃げたのだ?
義高 賭けてみようと思ったからです。
頼朝 賭け?
義高 はい。・・・・・・木曽を出る時、父上に死ぬ覚悟はしておけと言われました。自分でも、そのつもりでした・・・・でも、ここの人は皆良い人で、頼朝様にも政子様にもとても良くして頂きました。姫もよくなついてくれて・・・もしかしたら、生きてさえいれば、いつかまたこんな幸せな日々が戻ってくるのではないかと、そう、思った由に御座います。
頼朝 ・・・・そうか・・・・
義高 この一年は、夢だったのかもしれません。
頼朝 夢か・・・
義高 はい。幸せすぎる夢です・・・・そして桜のようにはかないもの・・・・でも、それでもいい。私は精一杯生きた!後悔はしていません。
頼朝 そうか・・・
義高 頼朝様、お願いが御座います!
頼朝 申せ。
義高 私は、重成の手にかかって死にとう御座います。
重成 若っ!!
義高 幼い頃から兄弟のように育った!・・・お前の手で、頼む・・・・!
頼朝 よかろう。重成、主君の頼み、聞いてやるがよい。 頼朝腰の刀を抜き、重成に渡す
重成 い・・・・嫌です!!私には出来ません!!
義高 重成!!頼む・・・最後の頼みだ・・・・!!
重成 ・・・っ若・・・ 受け取る重成
−重成、ゆっくりと義高の所へ。両手をついて、首を差し出す義高−
義高 木曽の男なら、桜のように生きよ・・・・散りゆく姿さえ、潔いものなり・・・・ 刀を振りかざす重成
重成 若・・・私も、すぐに参ります・・・
義高 ・・・・・まだ・・・・まだ死にたくないっっ!!!
重成 若ーーーーーーーっ!!!
−刀を振り下ろすと同時にライトC.O.&刀で切る効果音−
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