■あの日見た桜 第5幕〜別れ〜
−庭で遊ぶ義高・大姫・重成− ライトF.I.
義高 大姫、ご覧。今年もまた、桜が綺麗に咲いたよ。
大姫 本当!綺麗!
重成 若、こうして桜を見ていると、木曽のことを思い出しませんか?
義高 ああ、そうだな。
大姫 木曽って、どんなところ?
義高 綺麗なところだよ。鎌倉みたいに賑やかじゃないけど、春になると山一面に桜が咲くんだ。まるで桜色の霧の中に迷い込んだみたいで、時間を忘れる・・・山だけじゃなくって、川も綺麗でさ。冷たく澄んだ水の中を、桜の花びらがくるくる回りながら流れていく・・・・すっごく綺麗なんだ。姫にも、見せてやりたいな・・・
大姫 姫見たい!義高様、いつか連れて行ってね!
義高 そうだな。行けるといいな。
大姫 姫行くもん!絶対行くもん!
義高 そっか・・・そうだな。よし!姫、そしたらすっごく大きな桜の木見せてやるよ!
大姫 本当!?やったあ!姫、お父様とお母様にお話してくる!
お父様ーvv
姫、退場
重成 あははは、姫は可愛いですね!ねぇ、若。
義高 そうだな・・・・だから俺、嘘の約束ばかり・・・
重成 ・・・若・・・
義高 嘘をつくのはいけないと思ってる。でも、姫の無邪気な姿を見ていると、悲しませちゃいけない、だから、守ってやんなきゃって、つい嘘を・・・
重成 そうですね・・・
義高 なあ、俺たち、いつまでこうしていられるのかな・・・
−政子登場。小走りであわてた様子−
政子 義高殿!
義高 政子様!
重成 御方様、いかがなされました!?
義高 まさか、父上が・・・!?
政子 (頷いて)義仲殿が討たれました。ここにいては、あなたも殺されるでしょう。奥州に向かいなさい。あそこならば鎌倉の手も届かぬはずです。
義高 私は死ぬ覚悟は出来ています!!
政子 死ぬことなどいつでも出来ます!!・・・生きていれば、いつかまた会える日もくるでしょう。でも、死んでしまったら何もかも終わりなのですよ!?
義高 でも、逃げるような恥ずかしいまね・・・・っ!!
政子 生きるために逃げて、何を恥じるのです!?生きてこその、人生でしょう?あなたはまだ若い。生きて、生きて、生き延びなさい!
義高 政子様・・・・
政子 重成!義高殿を頼みましたよ。
重成 はっ!若、参りましょう!!
義高 政子様・・・・ありがとう御座います・・・どうか、姫を・・・ 義高退場。重成、一礼して退場
政子 ええ、安心なさい。
義高 ご免!!
−二人を見送る政子。そっと手を合わせる−
政子 わが国の宮の神々・・・どうか、愛しい子らをお守り下さい・・・・ ライトF.O.
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