■幸せの帰る場所 第2幕 〜咲子〜
−咲子、舞台の縁から飛び降りようとしている。ライトC.I.−
光輝 待った!! 光輝登場
−そのまま咲子に駆け寄り、羽交い絞め。やりにくければ腕を取るくらいでも良いが、出来れば咲子が悲鳴をあげやすいくらいがよい−
咲子 キャーーーーッ!!どどどどどどこ触ってんのよ!!バカッ!離して!!
光輝 この状況で離せるわけないだろ!?痛っ痛いって!!
−光輝、咲子に叩かれながらも、何とか咲子を中央まで引き込み、座らせる。手を離す光輝−
咲子 ・・・(ムスッとして顔を背ける)
光輝 「何で邪魔すんのよ。バカ!」・・・って顔に書いてるんですけど・・・
咲子 当たり前でしょ!どこの誰だか知らないけど、礼とか言わないからね!!
光輝 いいけどさ。・・・・・・でも、理由くらい聞かせてくれない?俺、散々走らされてヘトヘトな上に、バカ呼ばわりされて、何か、すっげー割りに合わないんだけど?
咲子 ・・・・・・・・・・
光輝 言いたくなかったら別にいいよ。今度は止めないからさ、お好きにどーぞ!(ムスっとして背を向ける)
咲子 ・・・・・・ごめん・・・
−しばらく間をおいた後、咲子がぽつりと口を開く−
咲子 死にたくなんか、ないよ・・・・
光輝 ・・・・・・・・(咲子のほうに向きなおす。黙って聴いている)
咲子 うちね、お姉ちゃんがいたんだ。お父さんと、お姉ちゃんと三人で暮らしてて・・・昔は良かったなぁ。でもね、ある日ママハハがやってきたの。ひどい女でさ、お父さんがいなくなると、すぐ私とお姉ちゃんを殴るのよ。幼児虐待ってやつ? わざと明るく話す咲子
光輝 ・・・・・
咲子 あー!今、「よくある話ね」とか思ったでしょ!
光輝 思ってないよ。
咲子 あははは、いいよ、無理しなくて!小学生の頃とか、先生に相談したら「頑張りなさい」って言われちゃった!何を頑張れば良かったのかなぁ! 笑いながら語る咲子
光輝 でも、頑張ったんでしょ?
咲子 ・・・・・ 笑いが止まる
光輝 死ぬしかなくなるまで、頑張ったんでしょう?
−光輝の言葉に、もう一度笑おうとして、出来ずに泣きながら頷く咲子−
咲子 ・・・・・・は・・はは・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・!!
・・・・私が小さいとき、間違ってあの女が大切にしてたエルメスのコーヒーカップを割ったことがあるの。
物凄く、怒られて、叩かれて・・・お姉ちゃんが手を引いて、家中逃げ回ってくれた。でも、階段の上まで来たところで捕まっちゃって・・・私、もう本当に殺されると思って、叫んだの。
「タスケテー、タスケテー」・・・・
気がついたら、あの女が階段の下で倒れてた・・・
光輝 ・・・まさか・・・
咲子 ううん。大した怪我はしなかったの。右足の、捻挫だけだったって。
でも、大人達は誰も許してくれなくてね。・・・・結局、お姉ちゃんがあの女を意味もなく突き飛ばしたんだ、ってことになって、お姉ちゃん、死んだお母さんの親戚の家に引き取られて行っちゃったの・・・
光輝 (びっくりした顔で)えっ・・・・?
咲子 会いたい・・・・・!昔に帰りたい!!
光輝 待って!お姉さんが引き取られたのって何年ま・・・
−「ピーッ」という鳥の声−
咲子 !ピーちゃん!!
光輝 その鳥、君の!?
咲子 ピーちゃんが見えるの!?
光輝 見えるも何も、そいつを追ってここまで来たのに!
咲子 まさか!この子、私とお父さんにしか見えないのよ!?
光輝 そんなっ・・・・・・君、もしかして咲ちゃん・・・・・?
−驚く咲子−
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