■暖かい夢の物語 8 | ||
−再びBGMが流れ出す。老婆とミリカ、元の場所へ。ミリカ、老婆の膝か、床の上で眠っている− | ライトF.I. | |
老婆 | それからずいぶん時が経って、あの病気はすっかり人間達の間から無くなりました。 「遠い昔にあった病気」・・・そう思われるようになりました・・・ けれど今もなお、とあるお城の地下室には沢山の人の血を吸って、ついに病気の影響を受けてしまった者がいるのです。 彼は今日も眠ります。 暖かい春のピクニック。 涼しい夏の水遊び。 楽しい秋の収穫祭。 嬉しい冬のクリスマス。 大切な、大好きな家族達・・・・・・。 その全ての思い出と、大切な人たちの血を身体の中にしまい込んで、彼は今日も夢を見るのです。 もう二度と、お日様に当たれなくなった身体で、暖かい光と、暖かい家族に囲まれた夢を、ずっと、ずうっと、見続けているのです・・・ |
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−ミリカが眠ったことに気付く老婆− | ||
老婆 | おや・・・眠ってしまったの?少し、長かったかしらね。・・・じゃあ、これから先はおばあちゃんの独り言・・・ | |
−老婆、客席に向かって語りだす− | ||
老婆 | 彼の村に病気がやってくるちょっと前に、遠くの町へ物を売りに出ていた一家がいたました。一家は村へ帰る途中、山の中で倒れている彼を見つけたのです。若い夫婦と幼い娘は人目とお日様の光を避ける為に、彼を古いお城の地下室に連れて行き、一生懸命看護しました。彼は時々目を覚まし、村でのことを話してくれました。 ・・・やがて時が過ぎ、夫婦は死に、幼かった娘もすっかり歳をとって、ほとんど歩けなくなってしまいました。 時折、月の無い日に町まで会いに来てくれた彼も、すっかり来なくなりました。・・・・きっともう、動けないのでしょう・・・・私には、こうして傍に家族がいます。でも、彼は一人ぼっち・・・目を覚ます度に寂しい思いをしているのでしょう。 私は会いに行くことができません。 だから、祈るのです。 彼が、いつまでも優しい夢を見ていられるように。 だから、語るのです。 いつか、優しい人が彼に会いに行ってくれるように。 暖かい、夢の物語を・・・・・・・・・・・ |
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−ライトF.O.ー | FIN | |
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