■幸せの帰る場所 第1幕 〜鳥〜
−病院の一室。ベットを起こして寄りかかっているみのり。その傍らで椅子に座って姉を見上げている幼い光輝− ライトF.I.
鳥のさえずり
みのり ねえ、どうして鳥が飛べるか知ってる?
光輝(子供) えーっとね、飛行機と一緒で浮力を利用して飛ぶって、先生言ってたよ。
みのり ・・・・・そ、そう?あんまり現実的な答えで、お姉ちゃん心臓止まっちゃいそうよ。・・・うっ・・・
光輝(子供) ええっ!やだやだ、姉ちゃん死んじゃやだ!ど、どうしよっ
みのり (笑いながら)冗談よ。(よしよし)光輝はいい子ね。
光輝(子供) もっ・・・もぉーー!冗談やめてよね!姉ちゃんがやるとシャレにならないんだからさ!
みのり あはは、ごめんね。悪かったわ。
光輝(子供) もう!・・・・あ、で?で?どうして鳥は飛べるの!?
みのり ふふ。そうねぇ。・・・・・帰る場所があるからかなぁ。
光輝(子供) 帰る場所?
みのり ん。きっと、自分を待ってくれる人がいる、そんな小さな幸せがある場所に、帰っていくんだわ。・・・・・・私も、帰りたい・・・・・
光輝(子供) 姉ちゃん・・・・・・バカだなあ。何くらい顔してんだよ!大丈夫だって!すぐ元気になって、うちに帰れるようになるって!俺、姉ちゃんが帰ってくんの待ってるからさ!
みのり 光輝・・・・ありがとう・・・・・
−「ありがとう」と重なるようにライトF.O.しながら、幕前舞台端に光輝(高校生)登場。スポットライト−
光輝(高校生) そう言いながら、姉さんの眼は俺ではなく、どこか遠くを見ていた・・・悲しそうに・・・姉さんがそんな顔をするたび、俺は、言葉を捜して困ってしまった。姉さんの帰る場所は、きっと、他にあるんだ。そう思うと、小さかった俺は、ひどく寂しい気持ちになった。姉さんは養子で、本当の姉さんじゃなかったけど、俺はとても大好きだったんだ・・・・・・・
そんな姉さんが死んだ夜。俺は病院から一羽の鳥が飛んでいくのを見た。白くて、大きな鳥だった。ずっと、ずっと見ていた。見えなくなるまで、泣くことも忘れて・・・・・・
あれから5年・・・
光輝、制服。
足元に学生カバン。
この間に後ろの二人とベットなどを片付ける。もしくは幕を下ろす。
−カバンを取って中央へ向かって歩き出す光輝。振り返って手を振る− ライトC.I.
光輝 いってきまーす!今日部活で遅くなるから!(立ち止まって)・・・え?やだなー、大丈夫だって!ははは、母さん心配性だなー。じゃね!(歩き出す)・・・はは、「知らない人について行っちゃだめよ」だって!子供じゃあるまいし・・・・・(また立ち止まる)
−一呼吸おいて、正面を向く光輝−
光輝 あれから5年。俺は高校生になった。でも・・・・(振り返って家の方を見て)我が家の時は、止まったままだ。姉さんの死を、父さんも母さんも・・・俺自身、受け止められないでいた・・・・(うつむく)
−「ピーッ」という鳥の鳴き声。はっとして上を向く光輝。鳥の動きを眼や体で追う−
光輝 あの鳥・・・あの時の鳥だ!!−今度は、見失っちゃいけない気がした−待って!!
−カバンを放り投げて鳥を追いかける光輝。そのまま退場*−
−いったん、ライトF.O. 一間おいて、F.I− 光輝、走りながら登場
光輝 (すごい息切れ)はあ、はあ、・・・・・さっそく・・・見失った・・・・・(脱力)
で、ここどこだー!?(←独り突っ込み)・・・・・隣町・・・・だよな・・あ!カバン!うわっ、ヤバっ、金ないじゃん!どうやって帰るんだよ・・・道わかんないじゃん・・・
−再び鳥の鳴き声−
光輝 あっ、あいつあんなとこ・・・・え?あれ、何だ・・・・屋上に・・女の子?・・・・!!まさか、飛び降りる気じゃっ!?ちょっ・・・待てよ!!
−再び走り出す光輝。ライトC.O−
*退場せずに、客席を走り回っても面白いかも。客席の方から、咲子を見つける演出も面白そう。
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